従来の専用サーバーに慣れている方には以下の疑問をお持ちの方もいると思います。
- AWS(クラウド)に興味はあるけれど、専用サーバーと何が違うの?
- 専用サーバーからAWSにするメリットはどれ程あるの?
現在専用サーバーで安定稼働できているならば、コストをかけてまでAWSに移行する必要ありません。しかしAWSへ興味を持たれている方は専用サーバーに何らかの課題を持っているのかと思います。
専用サーバーと比較した時のAWSのメリットと、どのようなサイトがAWSのメリットを活かせるのかを紹介します。
目次
8つのポイントで比較
専用サーバーやクラウドを使う上で注目したいポイントをまとめました。
項目 | AWS | 専用サーバー |
---|---|---|
初期費用 | ◯ 0円 | ☓ 数万円 |
拡張性・柔軟性 | ◯ 管理画面からすぐスケールアップ | △ 都度契約・再構築の時間と手間あり |
セキュリティ機能 | ◯ AWS内にセキュリティサービス多数 | △ サーバーと別に契約が必要 |
データセンター | ◯ 国内及び世界中に多数 | △ 国内に数箇所 |
初期構築 | ◯ 管理画面で操作してすぐ | ☓ 契約・構築に時間がかかる |
月額料金 | △ 安く使えるが同性能なら高くなる | ◯ 1万円〜 |
性能 | ☓ 仮想サーバーのためぼちぼち | ◯ 物理サーバーのため高性能 |
運用管理 | △ AWS専門知識が必要 | △ 運用作業に差は少ない |
AWSの方が優れている点と、どっちもどっちと言える点があり、それぞれ説明します。
AWSが優る点
1. 初期費用が0円
AWSはサーバー構築時の初期費用がありません。
構築したサーバーが稼働した時間と通信量に応じた費用が発生します。
専用サーバーは、ハードウェアを用意して初期構築作業を人が行うため、契約時に数万円の初期費用がかかることが一般的です。
2. 拡張性・柔軟性が高い
- サーバー追加(冗長化)が簡単
- 構成変更が簡単
AWS管理画面を操作して、サイトに割り当てるインスタンス(サーバー)を追加するだけで簡単にスケールアップが完了します。負荷状況に応じて自動でスケールアップするオートスケールも設定できます。
専用サーバーの場合、サーバーの追加契約を申し込み、ネットワークに組み込む構築作業が発生するため、費用・期間の両面で差があります。
3. セキュリティ機能が豊富
- DDoS対策
- 脆弱性対策
- セキュリティ評価
これらのセキュリティ機能もAWSは備えており、AWS管理画面より簡単に利用できます。費用も稼働した分だけの最低限で済みます。
専用サーバーの場合、サーバー業者とは別のセキュリティサービスの業者と契約し、一定の初期費用+運用費用がかかり、設置・設定する作業が発生します。
4. データセンターが世界中にある
AWSは日本国内では東京と大阪にリージョン(データセンター)があり、世界中の主要都市にリージョンを持っています。海外向けのサイトを作る場合、その国のリージョンにサーバーを立てることで最適なパフォーマンスでサービスを提供できます。
専用サーバーの国内業者のほとんどは、国内のみにデータセンターを1〜2箇所持っています。
5. 初期構築が5分で終わる
AWSは管理画面からクリックしていくだけでサーバー構築が完了するので、5分ほどですぐに使い始められます。
専用サーバーは業者へ申し込みし、契約後に業者側で構築作業が発生するため、早くて翌営業日になることが一般的です。
専用サーバーが優る・ケースバイケースな点
場合によっては専用サーバーの方が有利な点、さほど差が付かない点もあります。
6. 月額料金
AWSは最小構成なら数百円から利用できますが、専用サーバーと同等のサーバーをAWSで構築するとAWSの方が月額料金が高くなります。
例としてさくらの専用サーバーと同スペックで月額料金を比較しました。
ベンダー | サーバー | 初期費用 | 月額料金 |
---|---|---|---|
さくらの専用サーバー | スタンダード Xeon4コア | 86,400円 | 9,720円 |
AWS | EC2 c5.xlarge | 0円 | 約25,000円 |
※AWSの月額料金には転送量100GB(10万PV相当)を含んだ概算
同スペックにした時の費用は専用サーバーが優っていますが、単純に同スペックで比較できない難しさもあります。
AWSで大きな余裕を持った高スペックなサーバーを最初から用意することは少ないです。余裕=余剰コストのため、必要最低限のサーバーから始め、必要に応じてサーバーを増やして負荷分散・冗長化をすることが多く、安く始められることがクラウド本来のメリットです。
クラウドのメリットが必要ならAWSを使い、不要ならば専用サーバーを使うことが好ましいです。
7. サーバー性能
専用サーバーは物理的にハードウェア1台を専有しているため、CPUやメモリをスペック表記通りフル利用できます。
AWSはクラウド上の仮想サーバーで、CPU性能を分配して利用する形のため専用サーバーに比べ性能は劣ると考えられます。
上記月額料金の話と近く、クラウドはサーバー1台だけの性能より複数台に分散することにメリットがあります。Webサーバーとして使う場合の負荷対策は1台を高スペックにするより複数台に分散する方が効率的なため、用途に応じて選択するのが好ましいです。
8. 運用管理の手間
サーバー構築後にはバックアップやログ監視などの運用作業が必要になりますが、これらはサーバーにログインしてLinuxなどを操作する作業になるため手間は大きく変わりません。
AWSには運用管理を手助けしてくれるサービスも多く用意されていますが、それらを使う知識も必要になるため、一概に専用サーバーより優れていると言えません。(扱えるようになればとても楽になりますが…)
専用サーバーの運用管理をサーバー業者に任せるサービスも用意されています(フルマネージド専用サーバー)。AWSも運用管理を行う業者はあります。業者によって費用はまちまちですが、大きな差はないと考えられます。
AWSに向くウェブサイト
瞬間的に大きなPVを見込むサイト
TVCMなどの広告キャンペーンと連動した、瞬間的に大きなPVを見込むサイトやPVの増減が見込みにくいサイトには、状況に応じてオートスケールできるAWSが向いています。
会員登録型Webサービス
新しいWebサービスの公開当初は利用者が少なく、専門サーバーでは持て余してしまい余分なコストが発生してしまいます。しかしユーザー獲得が軌道に乗れば、今度はあっという間に専用サーバーでは手狭になってしまいます。
最初からAWSを使っておくことで、公開当初はサーバー費用を抑え、ユーザーの増加に合わせたスケールアップも簡単にできます。
越境サイト
日本国内の企業が海外の人を対象にした「越境サイト」を構築する際、国内にあるサーバーにサイトを作ると海外の人には重いサイトになってしまいます。
海外のユーザーが日本のサーバーにアクセスするまで数多くのサーバーを経由するためです。物理的な距離もインターネットの閲覧速度に影響します。
AWSは世界中にリージョン(データセンター)を持つため、対象の国のリージョンにサーバーを立てたり、AWSのCDN(CloudFront)を利用することで海外の人にも快適に利用してもらえるサイトを構築できます。
まとめ
今回は専用サーバーとAWSとの比較をまとめてみました。
これまで専用サーバーを利用することが多かったシステム開発には、専用サーバーよりAWSを利用することが多くなっています。AWSの柔軟性は開発時・運用時のメリットがとても高く、「クラウドにデータを置きたくない」など特殊な都合がない限り、開発会社からAWSを提案して採用されるケースが多いです。
しかしAWSには専門知識が要りますし、月額料金など専用サーバーが優る点もあります。
社内システムなどアクセス頻度が読める用途には専用サーバー、不特定多数に公開するWebサービスなどアクセス頻度が変動する用途にはAWSといった、簡単な線引で把握しても良いかもしれません。用途に応じて正しくインフラを選択しましょう。